永遠に咲き続ける花

鞘師があやちょを咬む話かと思いきや

演劇女子部 ミュージカル『LILIUM -リリウム 少女純潔歌劇-』絶賛上演中です。


なかなかに衝撃的な舞台で、観劇して繭期をこじらせるヲタ続出(含む私)。
ひとまずネタバレな話についてここら辺でポツポツつぶやいてます。


観に行く予定は無いけど雰囲気だけでも知りたい方はサントラダイジェストで。
誰が歌ってるかでネタバレになりかねない曲もあるので、これから観劇される予定の方はご注意の程。

公演ブログもあるよ。


というわけで久し振りに何か書きたいなぁと思ったのですが、単なる短いモノローグになってしまいました。
当然のごとくネタバレです(てかクライマックスの話だし)。








私たちが集わされたクランの広間の中心で、リリーはただ静かに立ち尽くしている。

視界の端に、短剣の切っ先を自分の胸に当てたまま恐怖に顔を引き歪めている、紫蘭の姿が見えた。
目に涙を溜めてイヤ、死にたくない、と小さく呟き震えていた紫蘭から、不意に表情が消え去る。
リリーのイニシアチブの力だ。従わせる相手に恐怖の感情を表に出すことすら許さない、極めて強力なイニシアチブ。
紫蘭はそのまま躊躇わず無感動に短剣を自分の胸へと突き立てる。まるで機械仕掛けの人形のように二度、三度とその動作を繰り返し、やがて崩れ落ちるようにその場に倒れこみ動かなくなった。
周囲では私が紫蘭と共に妹のように愛し教えてきたクランの少女たちが、ある子は自分で自分の体を刺し貫き、またある子達は互いに刃を向け無言で斬りつけあう。枯れた花が散り落ちるように自らあるいは殺し合いながら死んでいく子達には断末魔の声も無く、辺りに響くのはファルスの――TRUMPであるソフィ・アンダーソンの怒りと絶望の叫び声だけ。

やがて私の手も私の意思とは関係なしに、刃先がこちらに向いた短剣を構えたままゆっくりと胸の高さまで持ち上がるのを私は見た。
神様、と心の中で一瞬呟き、けれど不思議と恐怖は感じていないことに気が付く。
今まで300年もの間、私と紫蘭は時の止まったこの偽りの楽園でソフィの企みに荷担してきた。これはその罰なのかもしれないし、もしかしたら永遠の繭期からの解放という名の救いなのかもしれない。
だから今更神様に恨みごとを言ったり慈悲を求める必要は、恐らく無いのだろうと思う。

私が座りこんでいる位置からは――どのみち私にはもう顔の向きを変える自由すら許されてなかったけれど――リリーが今どんな表情をしているか、窺い知ることはできない。
けれども、彼女は。
これほどまでに完全なるイニシアチブの力を発揮することが出来るリリーは、恐らくもう……。


だから刃が心臓に突き当たる刹那、私は最期の祈りをリリーへと捧げた。
これから恐らく、永劫の孤独をただ一人生きていく運命にあるであろう、可哀想なリリーに。